アナログプレーヤー調整用レコード

以前にインサイドフォースとオーバーハングは記事にしました。

インサイドフォースキャンセラー
インサイドフォースキャンセラー(アンチスケーティング)は必要なのか。正しい値についての考察。
オーバーハング、トラッキングエラーの調整
トラッキングエラーの調整についての考察。内周、外周どこを基準に調整するべきか。また、オフセットアーム、リニアトラッキングの比較など。

アナログプレーヤーを調整する時に、プレーヤー本体の水平、アームの高さ調整、オーバーハングは比較的簡単に調整が可能です。

しかし、インサイドフォースキャンセラーや針圧を追い込むのは難しいと思います。(適正範囲の中で)何を基準に合わせるべきか分かりにくいからです。

それを踏まえて調整用レコードを紹介します。

アナログプレーヤー調整用レコード

調整用レコードの必要性

レコード全盛期は各オーディオメーカー、レコード会社からたくさんの調整用レコードが販売されていました。現在新品で購入できるものはそれほど多く無いと思います。

個人的にはピンクノイズとか各周波数信号は要らないです。ワウフラッターの確認用信号くらいはあっても良いかもしれません。

調整用レコードに求めるものは、インサイドフォースと針圧を調整するためのトラックです。その場合、同じトラックを録音レベルを変えて何パターンか収録されているものが多いと思います。

現在、日本国内で普通に新品で買えるレコードが思いつきませんでしたが、その中では比較的入手しやすい2枚のレコードを紹介します。

『月の光』MJテクニカル・ディスク 第3集

最初に紹介するのは、無線と実験からリリースされたレコードです。
第3集となっていますが、このレコード以外の存在は知りません。既に廃盤ですが、比較的中古では入手しやすいと思います。

参考: 『月の光』MJテクニカル・ディスク 第3集

2枚組レコードで、1枚がクラシック曲を収めたもの、もう1枚がテスト信号を収録したものです。

このテスト信号の解説を読むと、溝の切っていないフラットゾーンでインサイドフォースキャンセラーを調整し、針圧調整用の信号で調整という流れになっています。

無音部で針が止まるのが、正しいインサイドフォースキャンセラーの値というのは難しい問題です。オフセットアームの場合は、内周と外周でもインサイドフォースの値は刻々と変わりますし、音楽信号が入っている溝と、無音部でも接線方向に引っ張られる力が変わる可能性が高いからです。

針圧調整用には300Hz、50μm(水平方向)と70μm(水平方向)の信号を使います。
まず、50μmで音が歪まないかチェックします。このトラックはだいたい普通に調整していれば、歪みません。

次に70μmで同様に確認します。こちらのトラックは3dB高くなっていますので歪みやすくなります。歪むようであれば針圧を重くし、歪まなくなったら徐々に針圧を軽くします。歪まない範囲でできるだけ針圧を軽くするという流れです。

当方は無音溝で止まるようにインサイドフォースを掛ける行為に疑問があるため、最初から針圧調整用のトラックでテストしています。

例えば、音が歪んだ場合、左右どちらかだけ歪む場合にインサイドフォースキャンセラーの値を変化させています。

Hi-Fi News – Analogue Test LP

次に紹介するのは英国Hi-Fi Newsから出ているテストレコードです。新品で入手可能ですが、国内では流通していませんので海外通販する必要があります。

参考: Hi-Fi News Analogue Test Record LP

このレコードはオーバーハングゲージなども付属していて至れり尽くせりの仕様です。
MJのレコードと同じく、300Hzの信号を基準に、+12dB、+14dB、+16dB、+18dBの4種類が収録されています。

こちらではこのトラックをバイアス(アンチスケーティング)調整としています。

無音溝で止まるようにという指示はなく、300Hzのテストトーンで左右同一になるようにインサイドフォースキャンセラーを掛けろという意味合いです。
こちらのやり方のほうが正しいと思います。

あと、感覚的には片側が歪んでいる場合に、インサイドフォースキャンセラーの値で解決するのはわかりやすいですが、その前にアジマスを厳密に合わせることをお勧めします。

最後の+18dBで歪まないように再生するには、正しいセッティングができてる上で、針圧はかなり掛ける必要があります。自分のシステムでは+16dBの再生が限界です。

調整用レコードを使ったあとの音質変化について

テラークの1812みたいな、例外的なレコードでない限りここまで調整する必要はないと思います。

レコードのカッティング側の問題で歪みっぽい物はクリアーに再生できるようになるメリットはあります。

当方は通常のレコードが歪まない範囲で針圧は軽くするのが好きです。インサイドフォースをたくさん掛けることで、アームの感度がが悪くなる場合もあります。具体的には音抜けが悪くなります。

つまり、+18dBがちゃんと再生できる=音が良い とは限らないということです。

ただし、プレーヤーの水平、オーバーハング、アジマスの項目など正解があるものは、厳密に調整した上で、それを聴感でも確認できるのは良いと思います。

アナログプレーヤーは原理的に完ぺきなものはありません。

まず、レコードの盤自体が完全なフラットではありませんし、オーバーハングの概念もそうです。

ピュアストレートアームのように、トラッキングエラーよりもインサイドフォースの方が音に害があるという思想もあります。ピュアストレートアームは確かに音の鮮度は抜群ですが、トラッキングエラーの影響なのか、一般のオフセットアームに比べてサーフェイスノイズが多いと感じています。

リニアトラッキングだと、支点が動く弊害なのか、力感のある音が出にくいというデメリットや、カッティング状態が悪いレコードだと針飛びし易いデメリットがあります。

プレーヤー、アーム、カートリッジの構造を考えながら、何を優先して調整するのか、それがアナログの醍醐味でもあると思います。

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